イリス・ボネット『WORK DESIGN(ワークデザイン) 行動経済学でジェンダー格差を克服する』(2018年、NTT出版)序章「行動デザインの力」冒頭段落を抜粋

www.nttpub.co.jp

 1970年代後半、アメリカの5大オーケストラでは女性演奏家の割合がわずか5%にすぎなかった。 しかし、いま一流オーケストラでは、演奏家の35%以上が女性だ。演奏の質も高い。この変化は、偶然の産物ではない。それは「ブラインド・オーディション」が導入されてはじめて実現した。演奏家の採用試験で審査員と演奏家の間をカーテンなどで隔てて、誰が演奏しているか審査員に見えないようにするやり方のことだ。ボストン交響楽団を皮切りに、1970〜80 年代にかけてアメリカの有力オーケストラの大半がこの方式を採用した。 たいていは予備審査での導入だったが、女性演奏家が次の段階に進む確率は1・5倍上昇し、最終的に採用される割合も飛躍的に増えた。

 同種の試みは、何故、新人の登龍門である各種コンクールでもなされないのであろうか。審査員は容姿に左右されず、音だけで評価が可能になるであろうに。まあ、ショーとして成り立たないという理由でしょうが(現在では、ネット配信での映像ライヴ中継もある)。しかしながら、エスタブリッシュされたコンクールでの内部改革は無理としても、趣旨に賛同してくれるどこかの篤志家を募って、「このコンクールでは、演奏中、奏者の顔は見えてこず、音だけで評価します」という新方式を立ち上げるという試みはなされないものであろうか(配信については、映像は演出が成り立ちにくいであろうが、音だけのストリーミング配信は可能であろう)。